2006年5月の文章リスト

“ 2006年5月 ” 分の文。

ウォークマンとバッグと自転車

ボリューム上げると
まわりの音が聞こえなくなる

素知らぬ顔ですれ違い
涙の跡にも何食わぬ顔

ぼくを導く信号だけに従ってれば
ぼくはきっとそこへ行ける

道順だって関係ない
まわりの景色も関係ない

ぼくのペースは遅くはない
マイペースだって悪くない

本当に行けるかどうかもわからない
時間もないし 約束なんてありはしない

待ち人は今 どこでぼくを待ってるんだ?
きっとそこに着いたら逢えるだろう

ヘッドフォンをはずすのは
きっとそのときバッグと一緒に

そこで逢おう
約束はそのあとでする

でもまたすぐにペダルをこいでく
この自転車を降りるのはきっともっと先だろう

ムリに声を嗄らすより
今は好きな歌を聴いていこう

  • 2006年5月22日 18:38
  • 松田拓弥
  • Poetry

そう

意地をはって 見栄をはって
意気地なしで 根性なしで
なにをやっても中途半端で
泣き虫だけれど涙を隠して
強がりだけで走ってきた
ゆっくりだけど歩いてきた

今も自分なりに進んでる

変わらない僕がいる
変われない私がいる

それでいいんだよ
そう それでいいんだ
今そのままの自分でいようよ
そう 今のままで進んでいこう

  • 2006年5月22日 13:59
  • 松田拓弥
  • Poetry

心の森

ふたり 一緒だったのに
いつの間にか迷ってしまって
あなたにはぐれてしまっていた
でも今わたしは一人だけど
まだ前を向いて歩いてゆける
あなたの背中を探している
あなたもわたしを探してくれてる
そう信じていられたから

だけどいつしか疲れてしまって
時折座りこんでしまっていた
いつも心にあったはずの
あなたの背中も消えていた
振り向いてもくれないから
なにを探していたんだろう?
なにを探しているんだろう?
あなたのいない わたしがいる

暗い道では手をつないでくれてたね
遠くであなたを眺めたときもあった
笑ってたね
楽しそうに
嬉しそうに
迷ったりはしなかった
この手を伸ばせば
いつでもどこかに触れられた
そんな距離が支えてくれた

帰る場所もわかってた
またふたりで同じところに戻ってゆける
そんな安心に背中を押されて歩いてゆけた
だけど今は不安や怖さに背中を押されて
ひとりでふたりになるため走ってしまう
もう歩けない
いつ放れてしまったの?
いつから離れてしまったの?
隙間を埋める空を見上げた

だけどわたしは今もまだ
あなたの背中を探してる
ただぼんやりとあなたを想い
森の小径をたどるように
見えない背中を求めてる
だけど今は見つけてほしい

ずっと不安に追いかけられて
わたしはあなたを追いかけて
追いつきたくて 追いつきたくて
きっとうしろを振り返れたら
森を照らす木漏れ日のように
優しい陽射しにすがるように
きっと今は引き返しちゃうよ
ひとりで森から出てしまいそう
もう出たいよ
待ってるだけはもうつらいよ

気づけば私は前だけ見てた
そこに自分の気持ちがあったのかな
置いてかれるのが怖かっただけだったのかも
いつもその先に幸せがあると思っていたから
ほんの少し前にあって
手を伸ばさないとつかめないと思っていたから
だけど違ったんだね
あなたがいたから
ただ肩を並べて歩いてくれてたんだね
いつの間にか私が追い越してしまってたんだね
あなたは先を行ってたわけじゃない
振り返るのにもちょっとの勇気がいるんだね
想いだせる記憶や気持ちも幸せなんだね

私が走りだしてしまったとき
あなたも走ってくれてたのかな?
あなたには逃げているように見えてたのかな?

なにを探していたんだろう?
なにに迷っていたんだろう?

夢?


一緒にまた帰ろう

  • 2006年5月22日 07:23
  • 松田拓弥
  • Poetry

あなたが寝てる間に

いつもいつも試行錯誤で
流行の歌や神話のなかや映画から
愛の言葉をひっぱりだしては
自分のことだと胸にしまう

だから今は自分の愛がわからない
どれもこれも誰かが作ったものだから
自分の愛が見つからない
あなたに贈れるものがない

だけどこうして探しているのは
愛はきっとどこかにある
自分の 自分だけの愛が
きっとどこかにあって
それをいつしかこの手につかめる
そしてあなたに届けられる
そう信じていたいから

あなたの愛に応えることが
今こうしていることなら
ぼくも自分に自信が持てる
「愛してる」という言葉なら
あなたの愛する誰かの歌で
きっとぼくのそれより聴いているだろう
選ばれたのはぼくだけれど
そのなかには不安しかない
それを愛と呼べるなら
ぼくはその結晶だろう

そんなことを考えてるとき
あなたはそっとぼくの胸に手を添えた

あなたが愛しているものは
ぼくも愛せる気がしてる
どんな未来が待っていようと
どんな過去があろうとも
だからいずれはこんな自分も愛せるだろう

ぼくの愛を伝えたいから
今あなたが寝てる間に
ぼくだけの愛を
あなただけに
ちょっと笑ったような表情で
ぼくの胸を枕にして
今はそう眠っておくれ

  • 2006年5月22日 05:54
  • 松田拓弥
  • Poetry

応援ソング

いつも後悔なんてしたくないと言い聞かせては
いつも後悔ばかりをそんなふうに繰り返してた
涙を流す自分の姿が先に見えた
顔を背けるむこうの景色がそこにはあった

幸せはいつもむこうにあって
届きそうで届かない
悔しくてほんのちょっと背伸びして
見えないむこう側を見ようとしてる子供のように
「もういい大人」と自分につぶやきながら

たとえ1つだけだって
幸せこの手につかんでみれば
また1つむこう側に見えた気がする
そしてそれが欲しくなるんだ

幸せはいつもほんの少し先にある
だからぼくらはいくつもの幸せをつかんでいける
後悔が今またあとからやってきても
先には希望が待っている

そうなんだ
後悔は
むこう側にまた1つ幸せを見つけられることなんだ
始まりだ
あの日後悔しなければ今の幸せはなかったんだ

  • 2006年5月22日 02:36
  • 松田拓弥
  • Poetry

ホタル

そこにあった小さな光を両手ですくう
つかまえられた
そんな気がした
だけどそこには光はなかった
闇のなかへ顔を上げた
ぼくは光のなかに立っていた

舞い上がれ 舞い上がれ
空の星よりまぶしく輝き
死にゆく光を解き放て
舞い上がれ 舞い上がれ
生きゆく光で夜空をかざそう

まるで地面の下から出てきたように
ポツ、ポツと ポツ、ポツと
そして消えてはふわりと
死を招いているような
生きてくことを叫んでいるような
目を閉じても見えていた

舞い上がれ 舞い上がれ
月の微笑に重なって
見えなくなるまで飛んでゆけ
舞い上がれ 舞い上がれ
闇を照らす夜空のように
なにも恐れず
ふわり ふわり


ポツ、ポツと
ふわり ふわり
ポツ、ポツと
ふわり ふわり

  • 2006年5月22日 01:06
  • 松田拓弥
  • Poetry

お願い

愛することをやめないで

愛せることを止めないで

愛されること怖がらないで

愛されてること忘れないで

  • 2006年5月21日 23:54
  • 松田拓弥
  • Poetry

長靴

「ホントおまえって、人の心に平気で土足でズカズカ入ってくタイプだよな、ホント」


 考えた。
 考えさせられた。
 なんかちょっとだけ悩んだかもしれない。
 ……でも、たいして深くじゃなかった。


 たまたま出向いた先で、たまたま高校のときのヤツに会った。
 挨拶だけして去ろうとの予定が、近くにあった店に入ることになっていた。そいつと一緒にいた女の子は帰っていった。ちょっと離れたところで傍観者に成り果てていた彼女は、最初は「は?」って顔をしてたけど、すぐにそいつの肩越しからこちらを覗きこむと、ケータイを確認してから、なぜだか納得したようにクルリと背を向けて歩いて行った。


 そいつとはあんまり話したことはなかった。たまたま同じクラスになって席が隣になって、それから話すようになって、でも卒業するまでにはどちらからも話すことはなくなってた。
 でも、そんなそいつが話すことは、そんなに軽いことじゃなかったらしい…でも、そんなものなのかもしれないとも思う。
 ただ、そう言われた。

「ホントおまえって、人の心に平気で土足でズカズカ入ってくタイプだよな、ホント」

 そしてそいつは、なんか曖昧にへらへらしてコーヒーをひと口飲んだ。
 聞いてすぐは最初と最後に“ホント”を2回も繰り返すほどのことなんだな、と俺は思っただけだった。
 でもその次の瞬間…いや、それと同時に“は?”と感じた。さっき外でこいつと一緒にいた女の子が去り際にこいつに向けたあの表情が、今度は俺の心のなかに浮かんだ。
「は?」
「いや、そうだよ、ホント」
 そいつはコーヒーカップを持つ手の指にタバコを挟めてその中身をすすりながら、今度はこちらを探るような目で見てきた。それは、なんとなく癪に障る目つきだった。
 俺もタバコを1本抜き取った。
 そいつが火をつけてくれた。こういうヤツだ。

 こいつとはほとんど想い出ってものがない。話したのは誰よりも多かったけど、こいつとどこかへ行って楽しかったとか一緒に何かをやったとかいうことはない。
 人と話したこと、会話の内容はほとんど憶えてる。本当にしょうもないことも、今までの誰かと話したっていうその内容の記憶はほとんど憶えてる。なぜか、こればっかりはいつまで経っても忘れないらしい。
 誰かに昔の会話のことで「憶えてる?」って訊かれて、「え、そんなこと言ったっけ?」ってのが、俺にはほとんどない。なんとなくでも破片でも一応は憶えてることが多い。人が忘れてることを、いつまでも憶えてることのほうが多い。でも俺からそうやって確認することはしない。その人が忘れてしまってるってことは、その人にとってはたいして必要でも大切でもなかったってことだと思ってしまう。


 そいつは“おまえの影響、けっこうデカかったな”と俺に言った。

 そいつが言いたいのは、どうやらそれらしかった。
 俺にはそんな憶えなんてない。名言を吐いたこともないし、大舞台に立ったこともないし、俺の考え方とかを書いた作文をあげた憶えもない。
 こいつとの会話だって話したそのまんまの内容しかなかった。
「あっ、あいつ…どうよ?」
「お目が高い…いい背中のラインだ」
 なのに、そいつは言う。
 さらにはこうも断言してみせた。
「もしおまえに会ってなかったら、今、俺、違うね、絶対」
「まあ、それが良くても悪くても、おれのせいにはしないでもらいたいね」
 そいつはそれを鼻で笑った。そしてタバコを消してコーヒーを飲んだ。
 ちょっとムカついた。

「そういうヤツって、ほかにもいっぱいいんじゃん」
 ”人の心に平気で土足でズカズカ入ってくタイプ”
「でもおまえって、なんとなく違うんだよねぇ~、なんかこう…」
 タバコ吸いすぎ。
「…踏みにじってくんじゃなくて、踏みならしてくっていうか…畑で言えば、耕して踏み固めてくっていうか…んまあ、なんかうまく言えんけど、そんな感じ。わかる?」
「んまあ、なんとなく」
「んじゃまあ、そんな感じ」
 悪い気はしない沈黙だった。そいつもそんな感じだったように見えた。
「でも、それからなんだよね、おまえのダメなとこ…いや、間違いかな?」
「やっぱ耕すにはスニーカーより長靴のほうがいい?」
「なんかうまいけど、ちょっとズレてる…それに、おまえの場合、きっと裸足。でも、礼儀正しく革靴とかよりはずっとイイんじゃないの?」
 ちょっとの間。
「んで、おまえの間違いってさ、人の畑耕してある程度踏み固めるまで手伝ってやって、それまではいいんだけど、あとはもうほったらかしでいつの間にか勝手にどっか消えてくの…まあ自分じゃ気づいてないんだろうけどね」
 そいつはタバコを消した。なんか映画みたいなタイミングのよさだった。
「そんなの、自分の畑なんだから自分で好きな種埋めりゃいいじゃん。トマト食いたきゃ、トマトの育てりゃいいんだし」
「それはおまえだろ? …ってか、それなんだよねぇ~ホント」
「なにが?」
「なにがって…なんかさぁ~、種でも苗でも田植えでも何でもいいけどさぁ、実際そこまで一緒にやったらさぁ、それからまだ手伝ってほしいことってあんじゃん。たまぁ~にでもさぁ…どうよ?」
「…おれは肉体労働ってのが嫌いな質でね」
「おまえって土もけっこう選ぶからな…もっと質悪い」
「職人ですから」
「また笑いに持ってくなっつの」
 でもそいつは、今でもそういうのが好きらしかった。
「手伝ってほしかったら呼べばいいだけじゃん」
「それができたらおれだって、今でもまだおまえのケータイの番号ぐらい知ってる仲でいられたと思うけどね」
「ああ、おまえ…おれのせいにしないでもらいたいね」
「いや、こればっかりはマジで言わせてもらうけどねぇ…去ってくときのおまえって、なに言ってもムダって感じのオーラだしてんのよ…ってかおまえって、なんか勝手に決めつけてない?」
 そしてさらに、こう付け加えた。
「いろんなこと」

 結局、そいつとどれだけの時間いたか…挨拶だけしてさっさと消える予定が、実に2時間も同じテーブルに座ってコーヒーをおごってもらっていた。別れ際、そいつと一緒にいた女の子に申し訳ないことをしたと感じた。自分でもわかるかわからないかぐらい、ほんのちょっとだけ。


 たしかに、それはある。
 自分のなかにある、自分のなかだけの基準で、いろんなことを勝手に決めつけてしまってるかもしれない。それがたとえ、ヒトのことでさえも。
 自分の役割みたいなのを勝手に自分で設定して、それを終えたら自分から、自分で自分にも気づかれないように離れていってるのかもしれない。
 そいつの言うとおり、離れていったのは俺のほうかもしれない。もしかしたら、逃げたのかもしれない。
 それが何かはわからないけど、なにかを怖がってるのかもしれない。
 それも自分の、自分のなかだけに見つけた勝手な恐怖なんだと思う。

 俺は簡単に影響される。影響を受けやすい。
 歌でもなんでもそうだ。ちょっと小耳に挟んだりすれば、そのあと1日中そればっかり口ずさんだりする。本を読めば、そのなかの言葉を四六時中頭のなかでこねてみたり、映画を見れば自分がヒーローになった気分で素敵なヒロインをカワイイ、カワイイと頭のなかに描きつづける。
 でも、風が吹いてそれに乗って流されるんじゃなくて、そこに立つか座るかして、その風を受け止めるだけでいる。
 きっとそうだ。
 そして、体のどこかにできた隙間から抜けていく風はそのままで、どこかに残ってるものだけをつかまえてる。
 きっとそれだけだ。
 いつも自分の位置が決まってる。そして、そこから動かない。いや、動けないでいるんだと思う。
 勝手に自分の“範囲”みたいなものまで決めつけてしまってるんだと思う。
 自分のなかでの配置にしがみついて、必死になってる。
 きっと、俺の世界は狭い。
 でも世界は、もっともっと広い。

「おまえと関わった人って、イイ感じに付き合えてる人も多いと思うけど、けっこう傷ついた人も多いんじゃないの? 実際」
 これは自分じゃわからない。
「もしいたら、きっとかなり深いね」
 これも自分じゃわからない。
 でも、当たってる部分は大きいと思う。
 でもやっぱり、こればっかりは自分自身じゃわからない…いや、きっと俺はなにもわかってない。


 帰るとき、俺はそいつにケータイの番号を教えようとした。
 でもそいつは断った。
 やっぱり俺は、なにもわかってないんだと思った。

  • 2006年5月21日 22:09
  • 松田拓弥
  • Essay

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