"Poetry" にまつわる文章のリスト
時代
なにもかもが光も当たらず
その下を影のように漂っている
それさえどこにもとどまることなく
移ろいながら太陽のようにまた昇る
なんだかんだ言ったって
いつも時代に翻弄されて生きている
なにを見てもなにをしても
つかんでいるのはいつもその影でしかない
世界を変えた大発明も
デカい夢を実現させた天才も
たまたまそのとき雲の隙間に
お天道様があっただけさ
通り雨
気まぐれで悪戯で
ねずみのようにすばしっこくて
そこにいる人間でさえも
その長いしっぽで巻いてしまう
ヒットチャートに並ぶ歌も
いつかは「古い」と笑われながら
やがては“時の人”と呼ばれながら
記憶からも消えてしまう
でも棚には別の誰かの笑顔がある
中古になって涙も笑顔も手から手へ
知らないことはいつも新鮮に今度はさらに映えるんだ
そしてまた誰もが口ずさむ歌になるんだ
あらゆる才能も誰もが知る偉人たちも
時代のなかで選ばれたんだ
真実でさえ決められる
きっと愛だってそのなかで生まれて消えるだけなんだ
だけどみんなそんな時代のなかで生きてるんだ
ドブのようでも海のようでも
這いつくばって時には泳いで
そしてまた新たな時代を築くんだ
生まれては消えゆく愛のなかで
精一杯に生きていくんだ
そしてまた愛を思い知るんだ
雲なんてない
みんながみんな太陽で
互いを照らし合いながら
時代は僕らを反射してるんだ
きっと光はみんなの上に降り注いでる
- 2007年4月11日 06:29
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腕
なんだかやけに天気がいいけど
今日はなんとなく君と閉じこもって過ごしたい
話そう 君を話そう
僕の知らない君の過去も
君が描く未来の姿も
君のすべてを見つめていよう
知らないことを話すとき
そして聞くとき
君はなにかを思い出そうとするように
なにもないところを見上げるね
そして少し猫背になって
嬉しそうに笑うんだ
少し寒いと木洩れ日のように差し込む窓際へ
子供のように這っていくのも今は恥ずかしくないんだね
凛とした顔立ちも隙のないたたずまいも
君の内面までは隠せないさ
そやって自分だけで勝手にどこかへ行ってしまうのも
突然まったく関係のないことを考えては話しだすのも
いつも僕の腕から離れたあとで
決まって僕に微笑みかけるんだ
君は窓の外のなにかを眺めてる
僕は君に寄り添ってそっとその背中を抱きしめる
君は僕のその腕を見つめながら
掌でゆっくりなぞって手をにぎる
そしてまたなにも言わず窓の外を眺めるんだ
それでいい
それがいい
君は僕に安心していて
もしいつか僕を振り返ったとき
その目に涙を浮かべていても
それを拭ったりはしないから
- 2007年4月10日 01:14
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パンツの穴
いつも裸になってまたそれを手にとったときにふと気づくんだ
風が通るためでもなければデザインでもなく
いつの間にかできてるんだ
お気に入りや贈り物や
思い入れの強いものにも
いつの間にかできてるんだ
みんなみんな擦り切れていく
そして知らず知らずのうちに
そこだけなにもなくなってるんだ
一度大なり小なり見て見ぬフリをして
ここのところの忙しさとその日の結末を口実にしていても
そんなことは忘れてるんだ
新しいのを買ってきたり、また誰かにもらったり
それまではなにも脱げなくなってしまうんだ
たとえ後悔するとわかっていても
でも今度はなにを隠すためなんだ?
いっそ裸のままになって包み隠さずいたほうが
あっちブラブラ こっちブラブラ
恥も自信も積み重ねてきた経験も
いつだって自分次第で脱ぎ捨てられる紙一重なプライドだけ失くさなければ
その日その日をラクに楽しく過ごせそうな気がするんだ
一体どこでどんなふうに
なにをしたらこんな穴ができんだろう?
そんなこと気にしたこともないけれど
代えればすぐになにもなかったことにできるんだから
縫ったり貼ったり
自分でなおす必要なんてない
そんなのカッコ悪いんだ
でも自分でも知らぬ間にできてたことを
気づけばそこにあったものを
今またこの手に取ってみる
だからってなにもわからないし
なにも変わらないってこともわかってるけど
いつかその向こう側が見えてきそうな気がするんだ
そこを通して見える向こう側になにかがあればそれでいい
そして向こうからもこちら側が見えるといい
変わらずなにもなくてもいいんだ
それは自分が作ったデザインで
そこにまた違う風が吹くなら
- 2007年4月 9日 07:29
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愛しい日々
愛のないセックスのように
思いつくすべてを試せるような
めくるめく快感はないけれど
愛する人とのセックスのように
なにもかもを出し尽くせるほど
絶対と言いたくなるような安らぎもないけれど
ただ繰り返されるだけのような
凪いだ生活を愛せるようになってきた
繰り返すだけの毎日を繰り返しに
また朝を迎えてる
そしてまた眠るんだ
また同じ明日を繰り返すために
また同じ人に会って
「おはよう」と「またね」でつなげてく
「好き」や「愛してる」を約束に変えて
また来る明日に今日を見てる
気づけばいつも同じ道の上を走ってしまっているように
そこに行けば安心がある
向こうからはやって来てはくれないけれど
そんなときは自分から行ってしまうんだ
ただ人を見てても飽きてしまう
ただ外を眺めていても疲れてしまう
夢見たようなきらびやかな世界じゃない
むしろ色褪せたような寂びれた景色だ
行きもしない来もしない
そこにあるとも主張しない
歓迎も声援も褒めてくれるわけでもない
でも変わらずいてくれる
きっと人だけじゃない
そこにあるすべてがそうなんだ
そこにいる人もモノも
すべてがあって初めて安心できる
そこにある景色すべてが
僕を包んでくれるんだ
もう見慣れてしまった失いかけのモノトーン
いつもの景色はいつもセピア色に染まってる
でも今はその景色にまた自分なりの色づけをしていくのが楽しいんだ
なにも塗らずに無色のままでもいい
また全部消してもいいんだ
- 2007年4月 7日 00:23
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それなり
見た目以上に冷たい地面
鉄のような煙を上げる道路
うろこのように黒茶けた樹皮
乾いてる
求めてる
そして飢えてる
必死になったことがない
がむしゃらに働いたこともない
あきらめるのも早い
そのくせ捨てることはできないでいる
歩くのが速い人には
ついていこうともしなかった
僕がやることはいつもそれなりで
人にはムダだと言われがちなこともやってきた
食えない道草を探しながら
遠いのか近いのかもわからないまわり道をした
でもそれはそれで
今の僕にそれなりの役には立ってると思う
誰かがそれをムダだと言ったって
僕にとってはそのすべてが今になっている
なにもかもがつながっている
つなげてくれる
たとえそれはもしかしたら自分にすら取るに足らないかもしれない
だけどなにか1つが欠けてしまってもダメなんだ
捨てきれない夢も破れた恋も
壊れた絆も色褪せてゆく想い出も
自分に自信が持てないでいるのは
きっと自分にもっと期待を抱いているからなんだ
それなりの自信じゃ不安なんだ
自信よりも自分がほしい
乾きを癒す水のように
それ自体は味気なくとも
自由に、そして果てしなく
無風の谷間
まるで部屋で吸っているように
煙草の煙がただ上へと立ち昇る
それも悪くない
- 2007年4月 5日 00:53
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五円玉の穴から見えた世界
新たな出逢いを受け入れるたび
その未来に待ち受ける傷
傷つくことで新たな出逢いがめぐるなら
今はそれも愛おしい
桃
日陰
三日月
そしてまた白い季節
人はそれを何で計るんだろう?
時間や涙、つながり、本能。
いろんなもので感じてる
価値観や経験、夢や希望。
同じもの、似たものを見つめる互いの瞳が映しだす狭い世界。
広い世界に生きながら、ひとにぎりの人だけを探そうとする
求めれば求めるほど
世界がどんどん小さくなってしまいそうで
入口だけを無理やり広げようとしてしまうんだ
ホントはガラスのように硬くてもろいのに
ホントは今にも壊れてしまいそうなのに
見た目だけ偽ることでそれをもっと強くした
ムダに歩きすぎてしまったみたいだ
時にそんなことを考えた
くたびれた道標すら見当たらないような場所
これまでだって矢印どおりに進んできたわけでもないけれど
それがないと不安になるんだ
それがあるから別の道を進めたんだと気づくんだ
それなら今から作ればいい
今までそんなときもあったじゃないか
道が世界のすべてじゃない
泣いてるばかりが子供じゃない
同じように傷や痛みに耐えること
それが僕らの証じゃない
- 2007年3月30日 02:22
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もう大人になったかな
「変わらないな」
人はそう言う
でも僕のなかでは
いろんなことが変わっていった
たくさんの人を笑わせ 泣かせた
僕も笑い そして泣いた
そんな気持ちに触れるたび
心の音が聞こえるたびに
僕はきっと成長してきた
変わらないなんて何1つない
「お子様だな」
人にそう言われ
「大人になれ」
自分にそう言い聞かせたこともあった
でも僕も年を重ね
人と同じだけ同じ時の上にいつづけてきた
見える範囲のすべてを見て
聞ける範囲のすべてを聞いた
そんな経験を重ねるたび
僕のなかで積もるたびに
僕は人を傷つけたろう
そして僕にも同じような傷がある
なにかを手に入れるたびに
なにかを捨ててきたんだろうか
なにかを犠牲にするたびに
なにかを求めて得てきただろうか
そんなことも考えられるようになったんだ
ただ泣くだけじゃなくて
ただ笑うだけでもなく
そこにある理由に気づくことができるようになったんだ
そして、それを求めるようにもなっている
もう子供のころより
ずっと大人だ
- 2007年3月29日 01:47
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焼ける唇
どんな顔をしてんだろう?
目を閉じて
また開けて
永いようで短い夜が明けてくように
そっと唇も開きかけて
まるで蜂蜜のようなその甘いやわらかさ
ほんの少し僕も濡らして
糸を引くほどの余韻だけを残して
また少しぬくもり重ねて
まるで花びらがひらりひらりと舞い降るように
少しずつその唇が移ろい揺れる
目を閉じて思い描けば
空気だけではひどく冷たい
その吐息や唇が燃えるように熱いから
唇がそっと離れていった瞬間
想い出までも消えてしまいそうで
その唇を見つめてしまう
触れてしまう
指でゆっくりなぞってしまう
それがすべてであるかのように
この唇になにを含んだ?
この歯はなにを噛んだ?
舌の上ではなにを上手に転がした?
ただ眺めているだけで
焼けるほどの唇で
- 2007年3月28日 08:03
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