こだま

「おかえり」
かえってくる
またかえってくるよ
小さな明かりがそこに灯される限り

なにげない言葉
みんなだれもがあたり前のように使う言葉
また同じようなぬくもりがかえってくる

さびしいのかな
眠れないな
もう眠ったはずの部屋
明かりが一つ取り残されて
同じだけ淋しい思いをしていたのかな

眠れない日がきたときのために
ため息の数だけ明かりが灯る
くたびれた足音の数だけ
明るくしてくれたような気がするんだ

だれもそこにはいなくても
いつでも帰ってゆけるように
いつ眠れなくなってもいいように
長い夜が待ちくたびれていたように

消し忘れでもなく
「おかえり」なんて声もなく
ただ明かりをつけて待っててくれる
「愛してる」なんて言葉も必要ないように

なにも見えないわけじゃないけど
なにかに気づかせてくれるわけでもない
目を閉じてた暗闇をほんの少し明るく見せてくれるんだ
光なんてものではなくて
ぬくもりなのかもしれなくて

言葉とは違うこの不安や淋しさに
なにが返ってくるだろう
なにを返してくれるだろう
そしてこだまのない優しさやぬくもりに
なにを返せばいいんだろう

おかえりの声は言ってくれない
だれも褒めてくれやしない
なにかを言えば自分の声がかえってくる

それは小さな明かりのようなぬくもりだったり
だれかの信じたいと思った言葉だったりした
想い出色した眠れぬ夜の小さな部屋では

  • 2008年7月10日 04:01
  • 松田拓弥
  • Poetry

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