僕は僕であって
僕でしかないんだけれど
この僕がいつか
いつの日かどこかの誰かが必要としてくれたとき
そのときだけでもいい
そのためにあればいいなって
冷たい雨に打たれて感じた

僕が雨に濡れてるとき
きっと誰かも濡れてるんだ
僕は知らない
だけど濡れてる人がいる

僕が恋人を抱きしめてるとき
きっとたくさんの人もだれかを抱きしめてる
だけどそれを知らない人もいる
だれにも抱きしめてもらえず泣いてる人もいる

そんな人に僕はなにもしてやれない
ただ思う
僕が幸せを感じてるとき
そうじゃない人もいるんだって
幸せなこの瞬間に、と、そうじゃない人に
涙が出てくる

ただの優越感なのかもしれない
そうじゃない人への同情なのかもしれない
下にも上にもキリがない
卑屈になればいくらでも僕は小さくなれる
だけど思う
僕がどんな気持ちでいても
だれかがどんな気持ちになっても
僕が涙を流すそれはいつまでも変わらない

だけど本当になにもできない僕なのかな
気づいたり思ったりするだけしかできないまんまの僕なのかな
涙を流すことしかできないのかな
それでだれかが救われるかな

たくさんの友達がいて
恋人がいて
家族があって
挨拶を交わすだけの人たちもいる
気づきもしない存在だってある

愛すべきたくさんの命があって
だけど愛されない鼓動もあって
僕がたった一歩足を踏みだすだけで
いろんな人に影響する

小さな手のひらににぎった石で
この地面になにを描こう
なにを刻もう
一体なにを残そうか

まだなにも知らない子供たちが
大人たちに囲まれて生きてるだけの子供たちが
毎日どこかで泣いてる
泣いてることすら気づいてもらえない子供たちがいる

自分には自分の生活がある
時代や政治家のせいにもできる
それで手一杯かもしれない
だからそれを仕事にしてる人たちを応援すればいいのかな
どこかの大人たちが飲むためのコーヒー豆は
子供たちが摘んでくるものなのかな

自分がそこへ行って抱きしめてはやれないから
自分はなにもできないのかな
本当になにもできないままの自分なのかな
そうじゃなくて本当は
何もしてないだけなんじゃないのかな
なにもできない自分に涙を流してるだけなんじゃないのかな

気づかないときはそれでもいい
もしもどこかで気づいてくれたら
ほんの少しでも残ってくれればそれでいい

なにが残るか
なにを残すか
そんなことはどうでもいい
なにか少しでもその手のひらにその胸に
バラバラになった記憶でもいい

愛すべき命
愛されない鼓動
そのすべてが残ればいい
どこかのだれかに
そしてどこかのだれかが

もしもなにも残らなくても
それはそれで僕は構わない
そんなふうに僕の命があったらいいなって
また涙があふれてくる

  • 2008年5月 7日 00:55
  • 松田拓弥
  • Poetry

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