ありがとう

 会えないことがつらいんじゃない。
 ただ会えることが嬉しいんだ。


 いろんなことがあたり前になってくると、それに対する感謝の気持ちってのが、それ以上のスピードで薄れていくような気がする。
 ないのは困る。
 だけど、あってあたり前。
 空気に改めて感謝を示す人は少ないかもしれない。無意識のうちに、呼吸できてるってことで、それを感謝だとする人もいるかもしれない。
 いや、これはちょっとたとえが間違ってるかも。

 たとえば、“お昼のお弁当”とか。
「あ、そういえば、今日の弁当は?」
「ちょっと忙しくて作れなかったの」
「は? じゃあ、今日どうすんだよ」
「どうすんだよって……そんな、もともとあるものじゃないのよ」

 たとえ話2 “約束のない約束”の巻。
「今からだいじょうぶ??」
「ああ、今日ちょっとムリ」
「えぇ~、マジ~??」
「マジ」
「約束はしてなかったけどさ、いっつも会ってたじゃん。だから今日も会えると思ってあけといたのに……」
「自分のことぐらい、自分で決めさせてくれよ」

 やっぱし、感謝の気持ちってのは大事だと思う。
 そして、それは思ってるだけじゃダメだ。伝えなきゃ、それはたいして意味がないんじゃないかな。
 モノじゃあるまいし、やっぱり相手は同じ気持ちのある人間なわけだから、伝えなきゃ伝わらない。
 空気とかモノなら、そのために何か自分ができることをやればいい。
 で、さらには「いつもごめんね」とかじゃなくて、やっぱし「いつもありがとね」のほうがいいかと思う。
 なんとなくだけど……申し訳ないって気持ちからだと、どうも皮肉というか、ささやかな悪意というか、卑屈というか、ちょっとばかりの引っかかりを感じてしまう。
 個人的な感覚かもしれないけど、謝られると、なんかそこに他意があるように思えてしまうときがあったりする。謝られることで、何かこっちにも悪かったことがあったんじゃないかとか、こちらまで変に恐縮してしまったり、負い目というかプレッシャーまで感じてしまうことすらある。なんかもう、それ以上なにも言えなくなっちゃうし。
 ただそれを言うと、素直にそのまま「ありがとう」って受け取るってのも、遠慮もなく図々しいとか思う人もいるだろう。
 でもやっぱし、気持ちがいい。
 それでいて、なんか純粋というか、素直な感じがする。
 一発でわかりやすいような気もする。

 そういうことをたどっていくと、どうも最近、人から「ありがとう」って言ってもらったことが少ないように思える。
 なにかにつけて「あ、すいません」とか「ごめん」とかで返ってくるような気がする。
 波風が立たない。
 まあ、それは「ありがとう」でもそうだろうけど。
 波風立てようってわけじゃない。
 先に折れておいたほうが、なにごとも円くおさまるってことなんだろうか。そういう環境から得たみたいなことを体が条件反射みたいに反応するってことなんだろうか。
 それとも、たいして本当にそんなこと思ってなくても、平謝りって言葉もあるぐらいだから、そっちのほうが簡単なだけなのか。
 楽なほう、楽なほう……

 お願いと不本意。
 いや、成就と不本意。
 こっちか?? 結果か??
 ちょっとそれ取ってくれる? ああ、いいよ。はい。ありがと。
 鉛筆を落としてしまった。それを拾って手渡した。ごめん。
 その使い分けの基準はわからないけど、やっぱり「ごめん」とかのほうが多い気がする。
 鉛筆が転がってきて、それを拾って手渡して「ありがとう」って言ってもらえたからって、“よぉ~し、全部拾ってやるから、どんどん転がしてこい”とは思わないけど、また次への意欲が沸くんだろうな、きっと。
 まあこれも、特別なこと言ってるわけでなくて、たぶんこれこそがあたり前のことなんだと思う。
 鉛筆が落ちて自分のほうに転がってきたら、そんなことで感謝されるいわれものないほど、それは拾ってあたり前だ。

 「ありがとう」のほうが素直ってことなんだろうか。
 だから、それをまた素直に伝えるってことが難しいんだろうか。
 もし僕がお弁当を作ってる身だとしたら、やっぱり「ありがとう」のほうが、なんとなく嬉しくなりそうな気がする。そっちのほうが、なんとなく優しい気がする。
 会えること、お弁当がそこにあること。
 無意識のうちに感謝して、無意識のうちにそこには約束ができてて……
 どちらもがあたり前と思えるほど、遠く離れることはないってことなんだろうか。
 そんな締めでもいいかもしれない。
 でもホントは、ものすごく遠くて尊いものなんだ。
 たぶん、そんな言い方だとかはどうでもいいから、そういう気持ちを素直に伝えてくれさえすれば、それだけで嬉しいんだろうな。


 会えないときはこれまで、いくらでもあった。
 だから会えたときを素直に、ありがとう。

  • 2006年9月12日 00:34
  • 松田拓弥
  • Essay

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