ピクルス

 この1週間、まるでハンバーガーだけで過ごしたと言える。

 朝:なし
 昼:ハンバーガー3つ
 夜:ハンバーガー2つ

 飲み物は、いつもコーヒー牛乳である。やっぱり上手い…子供のころから、ずっとコーヒー牛乳に憧れておりまして…
 コーヒー牛乳って、ちょっとリッチな気分になれる…冷蔵庫に牛乳の豊富に並べられた家が、一番の憧れでした…
 なぜか…牛乳ってゴージャスな飲み物に…見える。

 今ではテリヤキとかビッグとか、いろんな種類が出てきて、キャンペーンみたいのになれば月見とかも、さらに種類が増えてくる。
 昔は…そう、まだ幼少のころは、俺もテリヤキとか、いや、ほぼテリヤキばっかり食べていた。
 なんでだろう?
 テリヤキとか、なんかああいう黒っぽくて脂のテラテラしたものに、ちょっと大人な雰囲気を感じていたのかもしれない。
 でも家では、そういうハンバーガーとかは、食べさせてもらえなかった。今では飽きるほど行ってる≪ドンキー≫も、≪吉野家≫も≪ギョーザ≫も、ファミリーレストランなんて≪とんでん≫しか知らなかった。
 つまり、それは買い食いというのを覚えてからのことだ。

 ピクルスが食えるようになったことに気づいたとき、俺は思った。
「俺も大人になったなぁ~」
 ピクルスだけ抜いて食べてた。なぜかマズく感じた。
 でもある日、それをマズいと感じなくなり、むしろ美味いと感じるようになったのが、その日だった。
 ピーマンもそうだった。今ではピーマンがとても美味い。色とりどりのパプリカを選ぶほどになった。昔はあのビミョ~な味加減がたまらなく嫌いで、ピーマンなんて食えたもんじゃなかった。
 ところがバッコン。
 今では「いつもよりちょっとピーマン多めに」といった具合でございます…

 …年を重ねるとともに、人間の味覚も変わるものなのかと、改めて思った日…

 それは、“タレント”、すなわち“才能”というやつにも同じことが言えるのではなかろうか?
 今ではもう【発明】なんてことは、まずあり得ないに等しい。
 今はもうオール電化住宅なんてものまであって、今から電気を発明しようとしても、それはもう“すでに”ある。
 たまたま先に見つけたってだけのこと。
 才能もそうだ。
 新しい才能を発掘したとしても、それはたまたま先に見つけただけのことだ。そこで開花したわけじゃない。
 もともとあるものを、先に発見しただけのことだ。

 たとえば、今の時代にもし、昔の人力車とかデカい自転車を持ってきたとしても、それはただのソレでしかない。むしろジャマになる。アンティークとして収集家に持ってかれるのが関の山だろう。

 野口氏もエジソンさんも、もし今の人なら、ただの人に過ぎない。

 こういうことに“もし”っていう単語を持ってくるのは、そもそもそれ自体が間違いなんだろう。キリがなくなる。
 でもそうやって考えないと、今の人たちには、先が見えないのかもしれない。
 自分の才能がわからなくて、自分の才能を見つけたいなら、まわりの人間と時代の流れをまず視野に入れるべきと言えるかもしれない。
 映画の脚本も、今からモノクロ映画や無声映画を作るとなれば、それはきっと【マニア向け】という貼り紙をつけられて世に出されるってなもんだ。それか、映画祭ノミネート作品という名ばかりの評価がつくだけに終わるだろうと思う。決して、「映画史上最高の観客動員数を記録!!」なんて予告編に出ることは望めないと思う。というより、予告編にすらお金をかけてもらえないかもしれない。
 今では、何でもかんでもゴチャゴチャにして、訳のわからないことが“新しい才能”と呼ばれたりしてるようにも映る…そんなときがある。


 しかしまあ、その“才能”ってやつも、いかにしてそこに気づけるかっていう問題なんだろうな。
 簡単に言えば、考え方の問題で、今となっちゃ“エジソンさんがいなきゃ、この夏エアコンなしだったんだな”なんてとらえるんじゃなくて、“エジソンさんがいたから、来年の夏まで待たなくてよかったんだ”とか考えればいいと思うんだな。


 “才能”も、その人と、その時代とにある、その“目”によって変わる。
 おじいちゃんは演歌が好きで、お孫さんは、ヒップホップが好きなように。

  • 2006年7月 6日 11:23
  • 松田拓弥
  • Essay

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