一緒に楽しみたいだけだった…

 俺はずっとバスケをやってた。

 いろんなことがあった。
 ホントにいろんなことがあったと思う。
 小学校の卒業アルバムのタイトルも『つらかったキャプテン』だったのは、先にも後にも笑いのネタだった。誰もが読んで俺に聞かせてくれたもんだ。
 とにかく、なんでもかんでも「キャプテン」だった。褒められるのも、怒られるのも、キャプテンの俺だった。それがイヤでイヤでしょうがなかった。

 はっきり言って“キャプテン”なんて肩書きはクソに近い。

 褒められるのもみんなだし、怒られるのもみんなのはずだといつも心のなかで思っていた。でも口には出せずにいた。
 でもチームメイトのお父さんお母さんたちは、いつもすごく俺に気を遣ってくれてたのを憶えてる。試合に勝ったときはすごく優しく接してくれた。負けたときは、もっと優しかった。


 小学。
 中学。
 高校。
 専門学校。
 かなりのバスケットバカだったと自分でも思う。
 でも、それで良かったと今は思う。
 はっきり言って、なんの役にも立たない。メシも食えないし、プロになるなんてのも、毎日まいにち飽きもせずにタバコを1日に1箱以上吸ってる時点でまず叶わない。
 というよりまず、高校最後の年の練習の最中に、しばらく呼吸ができなくなって死にかけてる時点でムリな話だ。たかだか高校の練習ごときでだ。

 でもメシを食うより大切なことがいっぱいあったから、そしてこんな今だからこそ良かったと思えるのかもしれない。


 さてさて話は変わって、ず~っとバスケをつづけてきて、笑っちゃうほどに気づいたことがある。

 “補欠ほど、試合以外で燃え尽きる”

 これは、楽しんでるんじゃなく、とにかくはりきってマジもマジ、大マジでやってるという意味…
 部活の練習のときより汗をかき、部活では見せないようなことまでやってみたり、とにもかくにもノールック…挙句の果てには、素人相手に「ファウルだろ!!」の連発で本気でキレてるし…

 わかる…よくわかる。それは、わかる。
 大会とかの試合に出れないし、出れても練習試合の残り5分とか後半だけとか…その分、そういうところでイイカッコしたいというのはわかる。
 でも、それは見ててこっちが悲しくなる。
 そういう人に限って、ただ見せびらかしたがってるだけに映るから。
 素人相手に、自分がうまいのは当然だ。もし下手に見られるようなら、「部活でなにやってんだ?」と言われても仕方ない。ファウルされたくなかったら、ファウルされないようにかわせばいい。

 でも、昼休みとか、放課後にちょっと残って仲間内でやったりする人たちっていうのは、単に「楽しみ」でやってる。ジュースとか賭けてるわけでもなければ、勝ち負けなんてランク外。俺も彼らと一緒に混ぜてもらっててそう思った。
 楽しくやりたいから「ファウル」だってその1つと思ってた。
 部活ではやっぱり勝ち負けが第一となってしまうから、それ以外では、一緒にバスケを楽しむことしか考えてなかった。
 笑いながら強引に抱きついて振りまわしてもアリっていう、そういうのが楽しかった。
 体育でも何でも、困ったときにだけ頼られてナンボのバスケ部だと思うし、頼んでもいないのに自分ばっかり目立たれたんじゃ、きっと次はもう声がかからないと思うわけだ…
 自分が楽しくやりたいから、まわりの人にはもっと楽しんでほしかった。


 “一緒に楽しむ”っていうところだと、高校の球技大会が一番印象に残ってる。忘れもしない…あいつら。
 良かった。
 バスケ部は1クラスに1人だけという球技大会ならではのルールがあった。そのとき同じクラスでバスケ部のやつがバスケに手を挙げていた…そいつに任せとこうかなぐらいの感じで、俺はなぜかできもしないソフトボールに手を挙げてたのだけれども、「殺す」と脅されては仕方ないので入った。さらに“ゲームキャプテン”という肩書きまでいただいていた。
 一応バスケ部ではないにしろ、小学や中学での経験者がほとんどのチームだったということが噂で流れ、たちまち“優勝候補”のレッテルが貼られたみたいだった。
 最初の何試合かは、ほかのチームメイトだけで充分だった。4人でも余裕で勝てたと思う。ほかのチームの人たちとは、やっぱり動きの格が違った彼らだった。

 だけども、準決勝…バスケ部はゼロにしても、全員が中学時代に部活で本格的に経験したチームと当たった。
 2点とっては2点とられ、3点とっては4点とられた。俺はパスに徹していた。それでも常に接戦だった。彼らはやっぱりすごかった。
 そして後半残り3秒ぐらいだったらしい…そこで俺がパスを受けてしまった。
 すでに4人に囲まれていた。バスケ部といえど、いや、逆にバスケ部だからこそ俺はビビッた。んなことはあり得ない…とにかくもう俺は強引にそいつらの隙間に割り込んで、シュートした。実際、かなりテキトーだった。フォームもクソもあったもんじゃなかった。
 シーンと静まりかえった。
 応援に来てたクラスメイトも、ギャラリーも、先生がたも、その会場にいた誰もがそのボールの放物線を目で追っていた。
 俺はすぐに審判を見た。その指はしっかりと3本立っていた。
 試合終了のブザーが一瞬の沈黙を破った。
 と同時に、会場が揺れた。いろんな声が飛び交った。笑い声。ゴッツい声。怒声。悲鳴も聞いた。
 俺はぶっ飛んだ…その先で、なぜか俺は応援に来ていた担任の田中先生に視線を向けていた。メッチャ笑ってた。跳ねてた。まるで吼えつづけるサルだった。
 そのまわりにいた女生徒たちは、チームメイトの上にどんどん飛び込んできていた。
 電子掲示板を見ると、しっかりと同点になっていた。
 俺はどうやらやったらしかった。プロバスケのビデオを観ながらいつも夢見てた、試合終了と同時の得点…
 んで、そのままフリースロー対決になり、俺以外のみんなが決めてくれて、見事に決勝戦に進んだ。

 決勝戦は、同じバスケ部のポイントゲッター率いるチームだった。予想どおりだった。
 そして試合は、その序盤からそのポイントゲッターに球が集まり、常にそいつが決めていた。
 それでもこちらは接戦にしていた。またもや俺はパスしかしていないのに、バスケ部でもない彼らの活躍だった。攻めに守りに、バスケ部に引けを取らなかった。
 でも試合終了のブザーが鳴ったときには、惜しくもなくうちのチームが負けた。

 最後までパスに徹して得点はほとんど彼らに任せていた、自分の得点力のなさだと彼らに侘びを入れた。
「いやいや、楽しかったよ」
 本気で涙が出そうなぐらい嬉しかった言葉だ。
「楽しくやれたんだから、いいじゃん。謝んなって、キャプテン」
 背中をポンポンとたたくというしぐさが、こんなにも人に嬉しい感じを与えるとんでもなく素晴らしいものだと気づかせてくれたチームメイトたちだった。

 たかが球技大会で打上をしたのは、このときが最初で最後だった。そのとき彼らをバスケ部にスカウトしたのも無理はない。
 でもあっさりとこう断れた。
「疲れんじゃん」


 こう思いだしてみると、俺ってけっこう青春バカかもしれないと思ったり思わなかったり…とはいえ、青春バカが大好きです。アツアツな人が大好きです。

 とにもかくにも、やっぱり“一緒に楽しむ”っていうことは大事なことだと思う。一緒にやれる仲間がいて、一緒に楽しめたら、それ幸いにして、最愛であり、最。

 なんか想い出話やら自慢話やら、本当に自分の身の上になってしまいましたが…
 とまあこんな感じで、バスケを通していろんなことを学べたし、今なお生きることも教えてもらえたし、やっぱりずっと続けてきて良かったなと思えます。
 あの準決勝みたいなシチュエーションでのシュートも、現役のときには何本も決めさせてもらいました。そのときはやっぱりヒーローみたいに、チームの全員が褒めてくれる。ひっぱたかれたり、蹴られたり、ぶっ飛ばされたり…でも、試合が終われば、みんながヒーローです。
 ヒーローなんていないと誰もが思う。
 でも、ヒーローがいないと感じたら、もうそのときには、自分もヒーローの一員になってるときなのです。
 ヒーローなんていなくてもいい。
 どうしても欲しいときには、自分で自分を褒めてあげてください。


 で、今はそれが“書くこと”になっています。小説だったり、詩だったり、歌だったりもしますが、どれもこれもが大切な自分の人生の1シーンになればいっかなぁ~という具合で…
 そういうのを一緒に楽しみたいだけだったり…


 結局のところ、なにが言いたいのか?

 …さぁ、自分でもさっぱりです。

  • 2006年8月16日 19:13
  • 松田拓弥
  • Essay

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