世界中の大きな大きなチビッコたち

「意外」

 必ずそう言われる。
 “子供?”
 俺が“好き”と口にすると、必ずそんな答えが返ってくる。
 意外だろうが、案外だろうが、子供はなにしたってカワイイもんだ。
 カワイイもんはカワイイ、こればっかりは譲れない。
 レジ待ちのとき、子供を抱いたお母さんが隣にいると、そのお母さんには気づかれないように、俺は必ず赤ちゃんにちょっかいを出してしまう。お母さんに気づかれたときは、笑ってごまかす。そして、お母さんが視線を前に向けたら、すかさずまたちょっかいを出す。また気づかれたら、また笑ってごまかす。
 正直言えば、そのお母さんには興味ない。話しかけられようものなら、お母さんの話には適度に相槌を打ちながら、もっぱら赤ちゃんと遊ばせてもらう。
 しかしまぁ~…
 そんな光景を見てるだけで、お母さんってのは嬉しかったり楽しかったりするんじゃないかと思われる…誠しやかに勝手な単なる子供好きの男の見解ってだけで、単に俺自身がそう願ってるだけかもしれまいに…見て見ぬフリをしてくれてるのかもしれまいに。
 でも、たいていが、お母さんは笑ってる。俺に話しかけずに、子供と遊んでるのを見て笑ってくれてるのだな…見守ってくれてるとでも言いましょうか…
 むしろ、そんなときは、俺も同じ子供として見られてるんだろうか。
 んでもって、そのときのお母さんの微笑みは、とても優しい…そんなお母さんは、どんなお母さんも、聖母でございます。
 さすがに“抱かせてくれ”とは頼めないから、何回も何回も赤ちゃんに指をにぎってもらう。あの感触がたまらない。ちっちゃけれど力強くて、固いけれど優しくて、ふわふわしててやわらかい…どうしても顔がニヤついてしまう。思いっきし抱きしめてやりたくなるけど、なんか壊れてしまいそうで怖くなる。
 そのとき、俺こそ加減を知らないクソガキなのだと思い知る。


 子供にじっと見られると、なぜか俺もじっと見つめ返してしまう。
 あのちっこい瞳の奥で、なにかドデカイ世界を見てるんじゃないかと、俺もその仲間に入れてほしくてそうしてしまう。
 でも子供はサッと顔を背けてしまう。
 探りすぎたか?
 子供にそっぽ向かれるほどに、悲しいことはない。


 目の前で子供に泣かれると、どうしていいかわからなくなってこっちまで泣きたくなるけど、ちょっと嬉しい気もしてみたり…
 ほんのちょっとでも、そのちっこいさらにちっこいそこに、俺に対する気持ちがわいたのかと思うと、もっと泣かしてやりたくもなる…でも、どうしてもそれは不可能。立っていたら、どっか座れる場所に連れていって隣に一緒に座ってあげたい。座っていたら、向き合ってあげたい。とにかく一緒にその手をつないであげたくなる。
 泣いてる子供もカワイイけど、やっぱり楽しそうに笑ってる子供が一番カワイイ。一緒に仲間に入れてほしいと感じてしまう。
 前に、そこで出逢えた知らない子供たちと砂場で遊んでいたら、そこにお母さんが現れて、その子を連れて帰ろうとしたとき、俺を見つめてその子が泣いた。今の今まで楽しそうに笑ってた子が俺の顔見て泣いてくれた…えらい嬉しかった。
 でも、レストランとかでビービー泣いてる子供はムカつく…そして、泣いてるその子をさらに怒る親はもっとムカつく。そこから力ずくでも連れてきて一緒にギョーザを食べたくなる。
 泣いてる子供をほっとくヤツが信じられない…子供ほど、泣いてる子供のそばへと寄っていく。
 その光景が一番好きかも…


 笑っては泣いて、泣いては笑って、笑っては笑って…
 天使よりも可愛らしい。
 立ち止まっては観察して、目を開いてはなにかを見て、目を閉じては眠ってて、尻をついては歩きだす…
 点と線よりシンプルだ。
 点と線で描かれたものより、点と線では描ききれない子供のほうが芸術だ。


 子供はデッカい嘘をつく。
 大人は小さな嘘を重ねる。
 なんか、100万人の大人を気取った人たちよりも、たった1人の子供のほうが、楽しくおしゃべりできそうだ…
 そんな気がした今日のこの頃…

  • 2006年6月26日 07:16
  • 松田拓弥
  • Essay

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