ありふれた時間

見慣れた街に雪が降る
歩くたびに鈴蘭の花が凛と音をたてそうで
つかめもしない水でさえひび割れしそうにガラスを包む
だけど君は白い服で笑ってる

向かいの小さな喫茶店
帰る時間をいつもそこで刻んでる
だけど今は空を見上げてくれる
君の腕時計も今は僕のコートのポケットのなかだから

いつもよりもほんの少し君は深く
僕の腕に抱かれてく

ほかには何もない時間
君と僕と今は雪
いつもと同じ君なのに
いつもと違う君がいる


音もなく静かに雪が降りつづく
きっと窓のむこうじゃ同じように時も積もって
予約しといた高級フランス料理さえ
今ごろ雪だるまみたいにされてるのかな
君もいつの間にか眠っちゃったね

でもいんだ
そんなことはどうでもいいんだ
君をこのまま抱きしめたい
だけど今はこのまましばらく寝ていてほしい


何度も同じ話を繰り返したり
お互いの変わらなさを笑ったり
この手 この肩 この口唇
いつもと同じ君だから


この気持ちやこのぬくもり
触れていられるこの距離だとか
君の寝顔を眺めながら
君の笑顔を思いだしたり
ただただ君が愛しくて
愛しくて 愛しくて

君の長いまつ毛が腕の上でかすかに踊った
そして僕の時計でそっと笑った
僕は気づかなかったフリをして
君もまた眠ったままのフリをした

  • 2006年6月 6日 21:36
  • 松田拓弥
  • Poetry

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