それまでは見知らぬ誰かのはずなのに
いつの間にかいろんな顔を見せてくれたり
それまでは知らなかった新しい時間が流れはじめる
そう 今さらだけど使い慣れた時計なのに
ホントなんてことはないんだね
知らなかったことを知っただけで
見たり聞いたり受け入れたりして
ごくありふれた笑顔やしぐさが
ほかの誰かにとってはあたり前のことのように
なんの意識も必要なくて
気づくことも気づかせてくれることも
「今さら」なんてそれすら笑い飛ばしてた
時間をいつも背負うように生きてきた
なんの重みも感じなくて
逃げることも追われることも
そこに時計があることすらも僕は忘れかけていた
過去のなにを時間のなかに残してきたのか
ただ今は触れることもできなくなって
記憶もどんどん薄れかけて
その瞬間の気持ちだって
今ある気持ちに負けそうで
大切にしたいと思うほど
それを写真で残したがるように
古いものはそっとヒモで結んでしまう
またヒモ解くときを恐れるように
季節や時間が同じく何度もくるように
出逢いと別れを繰り返して
だけど1つも同じものはやってこなくて
そのたびそっと胸の奥で結び目を解いて
淡くなってしまった表情や
色褪せた景色だけを広げてみるんだ
今ある色で補いながら
もし ヒモ解くことが許されないなら
もう 同じものは求めない
もし なお見ることができないのなら
もう その美しさには触れられない
愛ってきっとずっと難解で
パズルを埋めていくように
最後にやっと完成したとき
自然と笑顔になれるのかも
愛ってきっとずっと大きくて
木が葉っぱをつけてくように
最後に枯れて消えるとき
いつの間にか涙があふれてくるのかも
あたり前のようにある時間のなかで
同じものは1つもなくて
残すこともできなくて
心の奥に刻むんだ
突き刺すような点でもいい
それをつなげた傷みや涙が
軌跡をこうして作ってるんだ
失くすことは悲しいから
つらくてすごく淋しいから
たとえ一瞬だったとしても
そのとき感じた美しさをずっと忘れることがないように
美しいまま触れることもできるように
また許すことを覚えていくんだ
「今さらだ」と言いながら
いつか最後に完成したとき
すべての点で笑顔になってくれればいい
- 2006年6月 3日 11:28
- Poetry