ふぞろいな草が風を受けて揺れている
風にも名がない 草にもない
あてもない風に揺れる名もない草
なにかを待ってるわけもなく
なにかを追ってるわけでもなく
ただそこで揺れている
今日の風を受けては明日も風に吹かれてる
ただの情景描写と思うけれど
きっとそこになにかが重なり
自分にしか見えない景色が映しだされる
壊れかけた映写機に途切れたいつかの時間を呼んで
色褪せた心のフィルムを起こさせる
流れはじめた映像にはいつもの情景
道 車 交差点
人 友達 恋人たち
自分の部屋のちょっと大きな窓ガラス
そしてそこから見えるありふれたいつもの景色
いつもの景色とすれ違うたび
僕はなにを重ねるだろうか
なにがそこに重なるだろうか
いつもの見慣れた景色なのに
いつも違うと感じるときがある
そんなことがある
そこにはきっといつもの景色なんだけど
いつもはそこに映らない何かがそこに映ったかもしれない
だけど
いつもそこを通りすぎては忘れてく
家に帰って部屋に戻れば いつもの景色
必死になって探すけれどいつもの景色に安心して
自分の好きな音楽だけを聴き鳴らして
その耳にはそれしか聞こえなくなってしまう
風に色はないけれど 草に名前はないけれど
今はみんなの吐息に色がつく
見えない風は冷たいけれど
凍えた両手に白いマフラー巻いてみる
きっとなによりあたたかい
それを僕はこう呼ぼう
なによりあたたかい「ぬくもり」と…
きょうは色づく吐息に人のぬくもり見えた気がした
あしたはなにを重ねてしまうだろう…
- 2006年5月10日 20:56
- Poetry