elves

 「素敵な言葉には妖精が住む」という


 “妖精”って、なんか“涙”と同じぐらい神秘的なイメージがある。姿や形はわからないけど、なんとなくちょっとだけ光ってそうな感じがする。
 自由に飛べてその軌跡に星屑を降らす羽根が背中についてるだろう。淡い光を放ちながら…そして、もしそれが涙だったら、もっとキレイだと思う。妖精の涙でも、その言葉に流れた涙でも、どちらでもいい。嬉しくても、悲しくても。
 涙は言葉よりも、その多くを語る。
 だけど涙は、その多くを騙ることもある。

 でも涙って、やっぱり何より美しいと思う。
 女の人の顔の皮をはぎ落としたりもするけれど、その跡は、まるでその人が笑ったときに晴れる夜空という名の素顔に流れる天の川…

 でも僕は、そんな妖精たちの休める場所を作ってゆけたらいいなと思う。
 歌もそうだし、他愛ないおしゃべりも、たとえ挨拶だけだって、こんなにも素敵な言葉のあふれる世界にいる。
 世界中の人、その一人ひとりの、その心からあふれる言葉1つ1つに、きっと妖精は住んでるはずだから。

 僕の言葉を見つけてくれたそのときは、そこで静かに眠ってほしい。
 その羽根を少しでも休めていってほしい。
 そしてまた羽根を広げてゆくのなら、その言葉の上に涙を降らせてあげてほしい。
 その空のような心のなかに素顔のままの微笑みを。
 きっと涙の雨が降る。
 きっと優しい雨が降る。
 またここから飛び立つときには涙とともに微笑みを…

 妖精が住むためにできた言葉なんてない。
 伝えたい人の微笑みを宿すために伝えた言葉なのだから。
 言葉に宿った妖精は、きっとその心のなかに住む。まるで溶けていくように。
 いつまでも…
 そう、ずっとずっといつまでも…

  • 2006年6月 7日 13:22
  • 松田拓弥
  • Essay

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