僕は人が嫌いだった。

だけどそれは違ってた。

嫌われるのが怖かった。

傷つくのが怖かった。

だから僕は笑ってた。

笑っていれば時は過ぎると思っていたから。

笑っていれば傷も癒えると思っていたから。

だから僕は笑ってた。

ヘラヘラと、なにも見ずになにも考えることもなかった。

笑ってただそこを通りすぎてゆくことで、僕は僕を隠してた。

傷つくのはもう1度だけで充分だと、裏切られるのはたった1度でたくさんだと。 



だけど、裏切ることもつらい。

去ってゆくうしろ姿を見守られること、それもすごくつらいこと。

悲しみを知ってる人の微笑みは、何よりとても優しかった。

美しかった。

僕はそれをあとで知った。

時が経った。


僕は人が嫌いだった。

だけどそれは違ったんだ。

僕はホントは、人が大好きなんだと知ったんだ。

傷つくのも怖くない。

傷が増えると、痛みや流れた涙の数以上に、絆を深めてゆけるから。

だけどそれに気づいたとき、僕はひとりぼっちになっていた。

  • 2006年4月12日 03:50
  • 松田拓弥
  • Poetry

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